「障がい者の権利擁護について」

【障がい者の権利】
日本が締約している国際的な障害者権利条約は、障がい者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障がい者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障がい者の権利の実現のための措置等について定める条約です。これに伴い国内でも、様々な法制度が整備されており、本コラムではその中でも障害者差別解消法について言及していきます。障害者差別解消法(障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律)※1は、平成28年4月に施行され、障がいのある人が差別や虐待から守られ、地域で自立した生活が送れるよう、当たり前の生活があたりまえに行える社会を目指して権利擁護を推進しています。

※1 障害者差別解消法とは
障がいを理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項や、国の行政機関、地方公共団体等及び民間事業者における、障害を理由とした差別を解消するための措置などについて定めたものです。全ての国民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目標としています。

【課題】
近年においても、国・市町村といった行政機関、会社・お店などの民間事業者等で、障がいを理由とする「不当な差別的取り扱い」が一部散見され、小林さんも経験されている一人です。

≪不当な差別的取り扱いの具体例≫
• 保護者や介助者がいなければ一律入店を断る
• 障がいのある人向けの物件はないと言って対応しない
• 障がいがあることを理由として、障がいのある人に対して一律に接遇の質を下げる 等

【解決に向けて】
令和3年5月に改正障害者差別解消法が成立し、来年令和6年4月に施行されることになりました。今回の改正では、これまで事業者に、努力義務とされていた「合理的配慮の提供※2」が義務化されました。これにより、障害者差別解消法では、「不当な差別的取り扱い」を禁止しています。「不当な差別的取り扱い」とは、正当な理由もなく障がいがあるということでサービスなどの提供を拒否や制限をしたり、また障がいのない人には付けない条件をつけたりすることを「不当な差別的取り扱い」としています。「正当な理由がある場合」の判断は、個別のケースごとに行うことが大切で、一律に判断を行うことは、「正当な理由がある場合」には該当しません。

※2 合理的配慮の提供とは
障がいのある人から「社会的バリア(障壁)※3」を取り除くために、何らかの対応が必要との意思が伝えられた時に、行政機関や事業者の負担が重すぎない範囲で必要かつ合理的な対応をすることです。
「合理的配慮の提供」にあたっては、障がいのある人と事業者が建設的に話し合い、お互いに理解し合いながら共に対応案を検討することが重要です。建設的対話を一方的に拒むことは、合理的配慮の提供義務違反となる可能性があります。

※3 社会的バリア(障壁)について
〈 物理的バリア 〉
道路や建物、住宅、駅などにおける物理的に生じるバリア
例)段差、狭い・急勾配の通路、滑りやすい床、路上の放置自転車、座ったままでは届かない位置にあるもの(エレベーターのボタン)等
〈 制度的バリア 〉
教育や就労、地域での自立生活を送る中で、制度上の制約により生じるバリア
例)入学試験、就職や資格試験等で障害があることを理由に受験や免許等の付与を制限する等
〈 文化・情報面でのバリア 〉
音声情報や文字情報など、必要不可欠な情報が提供されていないことで生じるバリア
例)音声のみによるアナウンス、視覚に頼ったタッチパネル式のみの操作盤、点字手話通訳のない講演会、分かりにくい案内や難しい言葉等
〈 意識上の(心の)バリア 〉
障がいのある方に対する差別や偏見、障がいに対する無理解により生じるバリア
例)偏見や差別、障がいへの無関心、点字ブロック状に無意識に立ったり、物を置いたりすること等

≪合理的配慮を実践するための具体例≫
〈事例1〉 車いすユーザーが店内の受付や窓口を利用する際、カウンターが高いため、支払いや用紙への記入が難しい。
• カウンター以外の場所でやり取りをする
• 釣り銭トレイや記入用のボードを渡す
• カウンターを低くする 等
〈事例2〉 聴覚障がいのある方が、普段は口の動きで大まかな会話を読み取れているが、マスクをしている店員などの口の動きが読み取れない。
• 筆談ボードやスマートフォンのメモ、音声認識アプリを用いて説明する
• 本人の了承を得た上で、一時的にマスクを外して対応する
• はっきりと口の動きを読み取りやすいように話す 等
〈事例3〉 視覚障がいのある方が、飲食店のメニューを読むことができないため、注文できる商品がわからない。
• 点字のメニューを用意する
• 電子版の読み上げ機能があるメニューを用意する
• 商品名や値段を店員が読み上げて伝える 等
〈事例4〉 知的障がいのある方が、複雑な説明や、専門用語がわかりづらく、受付や手続きに不安を感じる。
• わかりやすい言葉や図などを用いて説明する
• ゆっくりと丁寧に話すことを意識する
• 知的障がいのある方が理解したのを確認して、次の説明に移る 等

【おわりに】
障がいにも様々あり、同じ障がいであっても、人それぞれに不便を感じることは違います。障がいのある人だけが、権利擁護だ、差別だと言いたいわけではなく、誰もが住みやすい街にしていくために、同じ一人の人間として、同じ目線で自分事として一緒になって考えることが、第一歩目だと思います。
春江町総合型地域スポーツクラブUNITIVE291でも、障がいの有無に関係なく、みんなが同じ環境に集い楽しめる居場所づくりや地域の中で生きがいをもてる環境づくり、家族で楽しめる居場所づくりを理念に、誰もが住みやすい街にするための活動を続けています。
実際に、障がいのない人が理解や実感できるのは、何年後かに老いた時なのかもしれませんが、その時までに、少しでも住みやすい社会や街にしていきませんか。

春江町総合型地域スポーツクラブ UNITIVE291